京都府向日市 株式会社大日本科研 様スキャニングプローブ搭載三次元測定機の導入で、測定圧によるワークの変形の誤差を解消
導入機種:CNC三次元測定機 STRATO-Apex 9106、横型CNC三次元測定機 CARBstrato 等

積み重ねた技術力が生み出す
高付加価値製品で業界をリード

約1200年前に桓武天皇の命で築かれた都、長岡京。その中心となる長岡宮が置かれたことで知られる京都府向日市で露光装置を開発・製造する株式会社大日本科研様(以下、大日本科研)を訪問。FPD(フラットパネルディスプレイ)用露光装置の分野で常に業界をリードしてきた同社が、長い歴史の中で大切に守ってきた品質本位のものづくりにおける取組や課題についてお話をうかがいました。
本事例の要約
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課題・背景
- 従来のタッチプローブによる測定では、測定圧によってワークが変形してしまうことがあり、測定誤差の要因となっていた
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導入内容・解決策
- スキャニングプローブによる微小センシングが可能な高精度CNC三次元測定機
「STRATO-Apex 9106」を追加導入
- スキャニングプローブによる微小センシングが可能な高精度CNC三次元測定機
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効果・展望
- スキャニング測定によって微小のセンシングで測定値を得ることができ、従来のような測定圧によるワークの変形を抑制
- 上記に伴い、従来よりも測定誤差を解消できることに期待するとともに、さらなる高精度な品質保証によって、より付加価値の高い製品の開発や持続的成長の実現へ
事業概要
高付加価値な露光装置で、半導体の微細回路形成を支える
大日本科研は、光学、電気、精密機械の融合である“オプトメカトロニクス”の優れた技術を有し、エレクトロニクス部品に微細な回路パターンを形成するための露光装置を開発・製造するメーカーです。
露光装置には用途ごとに様々な製品がありますが、大日本科研が得意とするのは、液晶ディスプレイや携帯端末などのFPD(フラットパネルディスプレイ)用露光装置や、LED用の露光装置です。

半導体製造に欠かせないクリーンルーム
「マスクレス露光技術」でプレゼンスを発揮
代表取締役会長の岡本 光三様は、同社の事業について、こう語ります。
「1967年の創業当初、当社は半導体用露光装置を製造していました。その後、大手メーカーの参入をきっかけに軸足を移し、FPDやLEDの製造にご活用いただく露光装置を手掛けるようになり、事業が拡大しました」
近年、同社は回路パターンの原版となるフォトマスクを使わない「マスクレス露光技術」の領域でプレゼンスを発揮しています。

代表取締役会長 岡本 光三 様
1µmの微細加工ができる技術的優位性
代表取締役社長 岡本 浩志様は次のように技術的優位性を強調します。
「一般的なプリント基板向けマスクレス露光装置の加工精度は20〜30µmほど。それに対し、当社は当初から9〜7µmと一段高いレベルの加工技術を実現してきました。現在は技術がさらに向上し、1µmの微細加工ができるようになっています」

代表取締役社長 岡本 浩志 様
運用体制
万全の開発体制と品質保証体制への自信が、より付加価値の高いものづくりへ
注目したいのが、同社が開発・製造する露光装置のほぼすべてがオーダーメードであることです。生産技術部 担当部長 遠藤 徹様は、次のように語ります。
「お客さまによって求める機能が異なるため、装置の注文を受けてから1台ずつ設計し、製造するのが通例です。リクエストを受けて新技術の開発に挑むことも多く、現在もフィルムセンサへの対応に取り組んでいます。私たちとしては、お客様と一緒にものづくりしている感覚です」

生産技術部 担当部長 遠藤 徹 様
それに加え、万全な品質保証体制が製品の付加価値を大きく高めていることも見逃せません。
「量産品ではないので、製品ごとに部品は少しずつ異なります。そうした状況を踏まえ、検査のノウハウを一つずつ蓄積して、品質保証のレベルを向上しようと努めています」と遠藤部長は説明します。
正確な測定結果を得て、
理路整然と説明できることが重要
検査業務は、生産技術部 品質管理課 技師 岸田 正生様と、もう1人のメンバーが担当しています。寸法精度が厳しい部品は、検査業務歴16年というベテランの岸田様が、測定方法が確立している部品はもう一人のメンバーが担当しています。

生産技術部 品質管理課 技師
岸田 正生 様
岸田様は検査業務の難しさについて次のように語ります。
「部品加工を依頼しているパートナー企業は、加工精度に自信をもっているものです。しかし、要求精度が満たされていなければ、それは受け入れられないとはっきり伝える必要があります。そのとき問題になるのが伝え方です。『多分ダメだと思うよ』という言い方では、加工した人は納得しません。正確な測定結果を得て、それをもとに理路整然と説明できることが重要なのです。それが開発とパートナー企業との間に入って検査している私たちの責任であると考え、一つの部品をさまざまな方法で測定するなど、正確性を担保するために徹底して検査することを心掛けています」
導入内容・解決策
スキャニングプローブを用いた高精度三次元測定機の新規導入で、測定圧によるワークの変形の抑制と測定誤差の解消へ
そして、2019年1月には高精度CNC三次元測定機「STRATO-Apex 9106」を新たにご導入いただきました。
同機をお選びいただいた理由について岸田様は、高い測定精度に加え、スキャニングプローブによる高精度測定のメリットを挙げます。
「タッチプローブによる測定では、測定圧によってワークが変形してしまうことがあり、測定誤差の要因になっていました。その点、STRATOのスキャニング測定は微小のセンシングで測定値を得ることができるので、これまでのような測定誤差を解消できると期待しています。先ほど述べたように、当社として自信をもって測定結果を示すことができるのは、大きなメリットであると考えています」

ミツトヨの高精度CNC三次元測定機「STRATO-Apex 9106」でスキャニングプローブを操作する岸田様
これまでも多数の精密測定機を活用している大日本科研
本社1階の検査室を訪れると、ミツトヨのCNC三次元測定機「Bright-Apex」、CNC画像測定機「QUICK VISON-Apex」(タッチプローブ搭載)、真円度測定機「ROUNDTEST RA-2200」など、多数の精密測定機が所狭しと設置されていました。中でも存在感を放っていたのは、横型CNC三次元測定機「CARBstrato」です。同機は、同社が手掛けた世界最大級のFPD用露光装置の開発・製造にご活用いただいたそうです。

写真左:CNC三次元測定機「Bright-Apex」、写真右:横型CNC三次元測定機「CARBstrato」
今後の展望
たゆまぬ努力で技術力と品質の向上を目指し、持続的成長へ
社是に「於量、非最大 於質、成最良(量において最大たらんとするにあらず、質において最良ならんとす)」を掲げ、品質追求の姿勢を強く打ち出している大日本科研。持続的成長の実現を目指すとき、そのこだわりは永続するテーマであると岡本社長は語ります。
「開発型の製品作りが私たちの事業の柱です。これからもお客さまに納得していただける品質の製品作りに邁進したいと考えています」
新たな製品領域への取り組みも今後のテーマであると岡本社長。
「そのためには社員一人ひとりのレベルアップが必要です。レベルアップした上で一つにまとまり、強いチームになっていきたいと思います」と意気込みを語ってくださいました。
お客さまから寄せられる厚い信頼を原動力に、たゆまぬ努力で技術力と品質の向上を目指す大日本科研は今後、さらに大きな発展を遂げることでしょう。
お客様プロフィール
株式会社大日本科研 様
エレクトロニクス部品に微細な回路パターンを形成するための露光装置を開発・製造するメーカー。液晶ディスプレイや携帯端末などのFPD(フラットパネルディスプレイ)用やLED用の露光装置を得意としています。

所在地 | 京都府向日市寺戸町久々相1番地 |
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設立 | 1967年2月 |
事業内容 | 精密機器の設計・製作・販売、理化学機器、計測器、光学機器の設計・製作・販売 |
URL | http://www.kakenjse.co.jp/ |
*本記事の記載内容は、過去掲載記事に対して一部再編集を行った2021年7月時点の情報です。
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