大阪府東大阪市 一般財団法人日本品質保証機構 関西試験センター 様長年の課題「ねじリングゲージ」の認定校正を表面粗さ・輪郭形状測定機を用いて確立
導入機種:表面粗さ・輪郭形状測定機 FORMTRACER Extreme SV-C4500 CNC 等

標準供給機関としての使命を果たすため真摯なまなざしで計測と向き合う

工場数で全国5位、工場密度で全国1位を誇る、ものづくりのまち東大阪市に拠点を構える、一般財団法人日本品質保証機構 関西試験センター様(以下、JQA関西試験センター)を訪問。公正・中立な第三者機関として、幅広い産業分野の品質保証に貢献している同センターが、ミツトヨの精密測定機器を用いて取り組んだ画期的な試みについてお話をうかがいました。
本事例の要約
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課題・背景
- 国家標準につながる校正方法が確立されていない測定機器に対する依頼がある。本取材で取り上げた「ねじリングゲージ」の校正においても、国家標準につながる認定校正の確立が長年の課題だった
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課題へのアプローチ
- 測定にミツトヨのCNC形状測定機が適しているのではと考え、ミツトヨにお問い合わせをいただいた
- ミツトヨは、暫定的にトレースしたデータから、理想的なトレースのための角度と移動量を割り出すことを提案した
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効果・展望
- 長年の課題だった「ねじリングゲージの認定校正」を確立
- さらに、ねじリングゲージの校正方法を応用して、多様な特殊段差ゲージ、医療用検査冶具など、さまざまな機器の形状測定の実現へ
事業概要・運用体制
国家標準につながる計測器の校正、計量器の検定業務を担う
今回お話をうかがったのは、大阪府東大阪市に拠点を置くJQA関西試験センター 計量計測課 課長 林様です。同課は8名からなる組織で、計測器の校正・計量器の検定業務を担っています。
「私たちはISO/IEC17025の要求事項を満たした校正機関です。私たちが提供している認定校正を受けることによって、お客さまの測定機器は国家標準につながることになります。また、その証明書があることにより、日本で実施した検査結果が米国や環太平洋諸国でも効力を持つことになります。このように認定校正を通じて、標準を市場に供給することが私たちの役目です」と同課の業務について説明します。

関西試験センター 計量計測課
課長 林 正智 様
標準供給機関として、さまざまな精密測定機器を駆使
JQA関西試験センターは、国内外のさまざまな規格・基準に基づく認証、試験を実施しています。主な事業には、マネジメントシステムの認証、種々の鉱工業製品に対するJISマーク認証、建設材料や金属材料、機械製品など建設に関連する各種試験、情報セキュリティに関連する認証や検査、計測器の校正・計量器の検定などがあり、公正・中立な第三者機関として産業界に安心と信頼を提供しています。

ミツトヨの演算形ゲージブロック自動検査装置「GBCD-100A」

ミツトヨの小形CNC画像測定機「QV ELF202」
課題の背景
国家標準につながる校正方法が確立されていない測定機器の存在
依頼元の中心は原子力や自動車関連メーカーなどがあり、一方で関西試験センターの周辺の町工場から計測器の校正依頼を受けることも多いそうです。
「特に原子力に関連する機器については、米国の原子力規格ASMEへの適合が厳しく求められます。こうした国際的な品質保証でも、私たちは重要な役割を果たしています」と語ります。
依頼の中には、国家標準につながる校正方法が確立されていない測定機器もあるといいます。今回、取材した「ねじリングゲージ」の校正もそのひとつです。
課題へのアプローチ
長年の課題「ねじリングゲージ」の複雑形状の校正で、
JQA関西試験センターとミツトヨの共創がスタート
「ねじリングゲージ」はメネジの形状をした測定器で、オネジを組み合わせて、その形状が正しいかどうかを検査します。しかし、形状の複雑さから汎用的な測定機器による高精度な測定が難しく、いかに校正するかは一部のお客さまにとって長年の課題でした。
「原子力関係のメーカーから依頼を受けたことをきっかけに、ねじリングゲージの校正の取り組みは始まりました」と林様は語ります。

「ねじリングゲージ」を測定する様子
オネジとメネジを組み合わせて用いるシンプルな測定器ですが、それを国家標準につなげるためには校正の精度が問題となります。いかにして値付けして、その値をいかに国家標準につなげていくかが重要となります。
まず、ねじリングゲージの校正で必要な有効径(ねじの谷の幅がねじ山の幅に等しくなるような仮想的な円筒の直径)の値付けに形状測定機を用いることを発案。測定にはミツトヨのCNC形状測定機が適しているのではと考え、ミツトヨにお問い合わせをいただいたことがきっかけで、この取り組みに協力させていただくことになりました。

ミツトヨのCNC表面粗さ・輪郭形状測定機を採用
測定精度や機能が豊富なことから、校正にはミツトヨのCNC表面粗さ・輪郭形状測定機「FORMTRACER Extreme SV-C4500 CNC」を使用することが決まりました。ですが、当初は思い通りの測定結果がなかなか得られませんでした。凹凸のある、ねじリングゲージの内径を精度高く測ることは想像以上に難しかったのです。
しかしながら、実験によって課題も明確になりました。測定時にプローブが理想的な点、つまり垂直に固定したねじリングゲージの内径の最下点を通っていないことが要因と気づいたのです。このことで、解決すべきことが明確になり、大きく前進しました。

ミツトヨの表面粗さ・輪郭形状測定機
「FORMTRACER Extreme SV-C4500 CNC」
ミツトヨは、暫定的にトレースしたデータから、
理想的なトレースのための角度と移動量を割り出すことを提案
「暫定的にトレースしたデータから、理想的なトレースのための角度と移動量を割り出してみてはどうか」というミツトヨの提案をもとに測定を実施したところ、測定値がJISの規格幅に入っていることが確認されました。
「この実験結果から、数値の妥当性が取れたと判断し、ねじリングゲージの校正ができるという見通しが立ちました」と林様は語ります。
課題解決の成果
新しい標準を生み出す取り組みで大きな成果。
「ねじリングゲージ」の認定校正を確立
JQA関西試験センター 計量計測課は、長年の課題であった「ねじリングゲージの校正」という難題に挑み、見事解決。その後、米国試験所認定協会(A2LA)から認定を受けて、「FORMTRACER Extreme SV-C4500 CNC」によるねじリングゲージの校正を標準につながる認定校正として、A2LAシンボル付校正証明書を発行できる認定校正として確立しました。
以後、JQA関西試験センターには、ねじリングゲージの認定校正を受けられる機関として、大阪府内はもとより、各地にあるJQAの拠点を通じて、全国からねじリングゲージの校正依頼が寄せられています。また、SV-C4500 CNCは、毎日のように稼働しているとのお話をいただきました。

ねじリングゲージを測定するミツトヨの「FORMTRACER Extreme SV-C4500 CNC」
今後の展望
妥協のない追求心が、新しい標準を生み出し続ける
ねじリングゲージの校正方法を応用して、多様な特殊段差ゲージ、医療用検査冶具など、さまざまな機器の形状測定をさらに実現。成果を得た今回の取り組みを林様は次のように振り返ります。
「各種の測定機が持っている得手不得手を考えながら、ねじリングゲージの校正では形状測定機で連続したデータを取ることが最適と判断して、着手したのが今回の取り組みです。こうした新しい標準を生み出す取り組みによって、これまで必要な認定校正を受けられず困っていたお客様のお役に立てたことを嬉しく思っています」
標準供給機関として計測器の校正に対する妥協のない追求心によって、JQA関西試験センターは今後さらに大きく飛躍されることでしょう。
お客様プロフィール
一般財団法人日本品質保証機構(JQA)
関西試験センター 様
国内外のさまざまな規格・基準に基づく認証、試験を実施。公正・中立な第三者機関として産業界に安心と信頼を提供し、幅広い産業分野の品質保証に貢献しています。

所在地 | 大阪府東大阪市水走3-8-19 |
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設立 | 1957年10月 |
事業内容 | ISO 9001やISO 14001等のマネジメントシステムの認証、電気製品・医療機器の認証・試験、計測器の校正・計量器の検定、建設材料・機械製品の試験・検査、JISマーク認証、情報セキュリティに関する認証・検査など |
URL | https://www.jqa.jp/ |
*本記事の記載内容は、過去掲載記事に対して一部再編集を行った2021年7月時点の情報です。
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