測定とは? 測定と計測の違い | 長さなど測定対象物別の測定方法や、測定機器を紹介
ものづくりの現場では、測れるかどうかが大変重要です。計量単位はmmからμm(1 μm:0.001 mm)という世界です。この記事では、そもそも測定とはどういうことか、その重要性や計測との違い、測定の種類と方法について解説し、最適な測定機器も紹介します。
測定とは?
測定とは、測定物の寸法を一定の基準(単位)に基づいて数値で表すことです。また、測定物と基準となる測定機器の数値を比べること、ともいえます。
例えば以下の測定場面を想定してみましょう。
直径28 mmの円筒部品をつくっていたとします。許される誤差は、±0.02 mm。あなたなら、何で測りますか?
たとえば、0.001 mm表示のデジタルマイクロメータで測ったら、直径は28.006 mm。この結果なら、±0.02 mmの要求精度にこたえられたことになります。
▼0.001 mm表示のデジタルマイクロメータ
上の例で、もし、基準である測定機器が不正確で、実は直径27.978 mmの出来栄えだったとしたら……。これが現場でのことだったら、大きな損害を被ることになるでしょう。
ものづくりの現場では、要求精度と測定物に即した測定機器を適切に選定することが重要です。
測定と計測の違い
手元の辞書を引いてみると、測定は、「器具や装置などを使って、長さ・重さ・速さ・温度などをはかること」。一方、計測は、「器械や道具を使って、長さや重さをはかること」とあります。類義語として測定の記載もあり、辞書において二つの言葉の間に大きな違いは見られません。
しかし、日本産業規格(JIS Z 8103 : 2019 「計測用語」)では、測定と計測について明確に定義しています。
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測定
ある量をそれと同じ種類の量の測定単位と比較して、その量の値を実験的に得るプロセス
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計測
特定の目的をもって、測定の方法及び手段を考究し、実施し、その結果を用いて所期の目的を達成させること
簡単に言えば、測定は単に基準をもとに量を数値化することに対し、計測は目的・方法・実施・結果といったプロセスを踏むことで、測定よりも広い意味となります。測定も計測も同じ「はかる」という意味ですが、測定の世界においてはこのように使い分けられています。
測定物別の測定方法
長さ、高さ、丸さ、粗さ、形、硬さなど、測る種類は実にさまざまです。ここではわかりやすいよう表にして、測りたい物の種類から、測定方法を紹介します。
測定方法別の測定機器
長さや高さなど測る種類によって、それぞれ測定方法があることを上の表で示しました。次は、各測定方法に適した測定機器の紹介をします。
1)挟んで使う主な測定機器
ノギス(キャリパ)
非常にポピュラーな測定機器で、測定物の外側寸法、内側寸法、深さ、段差を測定することができます。最小読取値は、0.05 mmまたは0.02 mmの測定を可能にしたモデルがあります。さらにデジタルタイプのノギスでは0.01 mmまで読み取ることが可能です。表示された値をダイレクトに読める利便性もあって、普及が進んでいます。
マイクロメータ
測定物をはさみ、その外径や長さ(厚み)などを精密に測定することができます。見た目はいたってシンプルな機器ですが、最小読取値は0.01 mmまたは0.001 mmの測定を可能にしたモデルがあります。さらにデジタルタイプのマイクロメータでは、0.0001 mmの測定を可能にしたモデルもあります。一般的にノギスよりも高い精度が求められる測定に用いられます。
2)なぞって使う主な測定機器
表面粗さ測定機
▼ポータブルモデル
▼据え置きモデル
形状測定で「表面の粗さ」に特化した測定機です。検出器の先端に付いているスタイラス(触針)で測定物の表面をなぞり、スタイラスの上下運動を検出し記録します。ポータブルモデルはバッテリーを搭載していますので電源のない場所でも使用可能です。据え置きモデルは測定物を同一位置に設置してスタートボタンを押すだけで繰り返し測定を効率よく行えるモデルもあります。
輪郭形状測定機
形状測定で「輪郭」に特化した測定機です。検出器のスタイラス(触針)で測定物の表面をなぞり、スタイラスの円弧軌道を記録します。新機種では、移動速度の高速化によりトータル測定時間が短縮され、スピーディな形状測定が可能になっています。
3)くぼみをつけて使う主な測定機器
ビッカース硬さ試験機
正四角錐(対面角136 °)のダイヤモンド圧子を測定物に押し込み、その荷重とくぼみの表面積から硬さを算出します。くぼみが小さいので、小さな測定物の測定が可能です。金属材料やセラミックス材料や樹脂材料なども試験可能です。また、自動連続試験が可能なアドバンスドモデルもあります。
ロックウェル硬さ試験機
圧子を一定の力で測定物に押し込み、そのときの圧子の押し込み深さから硬さを算出します。アナログタイプからCNC (Computer Numerical Control)制御のハイエンドモデルまであり、金属材料の硬さ測定に広く用いられています。
4)影を見て使う主な測定機器
投影機
ステージ上に置いた測定物に光を当て、スクリーン上に正確な倍率で拡大投影します。スクリーン中央の十字線を基準にして測定物の寸法を測定したり、拡大した図面をスクリーンに取り付けて測定物の影と大きさを比較して製品の合否を判断します。
品質管理室だけではなく、加工途中の寸法チェックなど、生産現場でもよく使われています。
レーザスキャンマイクロメータ
多面体のミラー(ポリゴンミラー)を使用してビーム状のレーザー光を走らせることで、測定物にレーザーが当たると、受光側に光の強弱(明暗)が出来ます。この強弱(明暗)の時間から寸法を表示します。超精密スキャンモータを採用し、超高速・高精度測定が可能になっています。また、直線性精度向上などのニーズへの対応も進んでいます。
5)拡大して見て使う主な測定機器
測定顕微鏡
高精度なステージを搭載し、観察だけではなく測定にも使える顕微鏡です。小さな測定物や、接触測定では変形しやすい測定物の検査に使われます。接眼レンズを覗いての測定だけでなく、カメラとソフトウェアを取り付けて、パソコン上で観察や測定も行えます。
画像測定機
▼マニュアルモデル
▼高速高精度の自動測定モデル
測定物をカメラで捉え、寸法や形状の測定が行えます。手軽に使用できる手動ステージのモデルから、大量生産品を高速に測定できるCNCモデルまで、さまざまなモデルがあります。
さいごに
ここまで測定の定義、計測との違いについて述べ、測定の種類と方法、それに適した測定機器を紹介してきました。
ものづくりの現場では、測れるかどうかが大変重要です。そのためには、精確に数値化するさまざまな測定機器が不可欠です。また、測定機器はその信頼性を維持するためには定期的な検査が欠かせません。
「つくれるかどうかは、はかれるかどうか」
高精度測定を実現する測定機器は、さまざまな場面において非常に重要な役割を果たしています。