マイクロメータの正しい使い方、読み方と注意点

ものづくりの現場でなくてはならない精密測定工具--マイクロメータ。そのマイクロメータの測定方法と特徴、正しい使い方と注意点など、わかりやすく解説します。


マイクロメータ 基本の“き”

精密測定工具、マイクロメータとは?

マイクロメータとは、測定する対象物をはさんで、その外径や長さ(厚み)などを精密に測る工具です。測定方法は、0.5 mmピッチの精密なネジを用いて、その回転をネジの軸方向の移動量として求めるようになっています。現在では、2.0 mmピッチの精密なネジを用いた機種もあり、より大きなピッチのネジを使用することで、よりスピーディな測定を可能としています。

測定は古来、ピラミッドをはじめ人間社会のさまざまな場面で必要とされてきました。ものづくりにおいては、「正しく測定できないものは、正しく加工できない」ことになり、品質の評価をするために“測定”は必須です。マイクロメータは、その精密測定に必要不可欠なツールの一つなのです。

たとえば、航空機関連企業の生産現場では、実に3,000本以上のマイクロメータが使用され、空の安全に重要な役割を果たしています。
※上記は外側マイクロメータについての説明です。

「アッべの原理」(精密測定の法則)によって高精度測定を実現

アッべの原理とは、「測られるものと標準尺とは、測定方向において、一直線上に配置しなければならない」というものです。マイクロメータはこの原理に基づいている工具で、ノギスなどより高い精度の測定が可能です。

マイクロメータ

マイクロメータは、見た目はいたってシンプルな工具ですが、標準モデル では1 μm(マイクロメートル)まで読み取ることが可能です。1 μmは、1 mmの1/1000。身近なものでは、コピー用紙が約90 μm、髪の毛が約70~80 μm、食品用フィルムが約10 μmです。1 μmという単位がどれだけ微細で、マイクロメータがどれだけ精密な工具か、がわかります。


マイクロメータ

代表的なマイクロメータの種類

一般的にマイクロメータといえば、向かい合う測定面が円筒形状のマイクロメータをさしますが、使用目的に応じたさまざまな種類もあります。

代表的な種類を例に挙げると、小径・横溝の測定に用いる「キャリパー形内側マイクロメータ」、ネジの有効性を測る「替駒式ねじマイクロメータ」、平歯、はすば歯車のまたぎ歯厚の測定に用いる「歯厚マイクロメータ」などがあります。

ほかにも下図のように、細溝径の測定、パイプの肉厚測定、歯車のオーバピン径の測定など、使用目的に応じたさまざまなタイプがあります。
※当社では、使用目的に応じた特注品にも対応しております。


マイクロメータ

マイクロメータの正しい使い方と注意点

ここでは、標準外側マイクロメータを例に、主な使い方と注意点を解説します。マイクロメータは、0 mm~2000 mmまで測定が可能です。測定範囲を確かめて、測定物の形状や使用目的に適した種類を選びます。


マイクロメータ

1.マイクロメータと測定物をよく室温になじませてから使用します。

室温になじませないと熱膨張による誤差が生じます。

2.使用前にアンビルとスピンドルの両測定面を白紙でよく拭き取ります。

日常の管理として、スピンドルの外周と測定面のほこりや切り屑などをよく拭き取ってください。また、各部に付着した汚れや指紋を乾いた布でよく拭き取ってください。


マイクロメータ

3.使用前に基点を確認します。

1)ラチェットストップ(定圧装置)をゆっくり回してアンビルとスピンドルの測定面を合わせます。


マイクロメータ

ラチェットストップをまわすとパチパチと音を立てて空回りし、測定面に適切な測定力を掛ける事が出来ます。


マイクロメータ

尚、測定力を一定にする装置として、一般的にラチェットストップ式が使用されていますが、それと同じ目的でフリクションシンブル式やラチェットシンブル式もあります。


マイクロメータ

2)シンブルのゼロ目盛線とスリーブの基準線が合致していることを確認します。

マイクロメータスタンドへ取り付ける場合は、マイクロメータのフレーム中央部をはさみ、強く締めすぎないようにします。そして、シンブルのゼロ目盛線を中心に、上下の目盛が均等に見えるようスタンドの角度を調整し固定します。


マイクロメータ

マイクロメータ

4.使用前の準備と確認が済んだら、測定します。

測定の際は、スピンドルによる過剰な測定力がかからないよう、基点を確認した時と同じ姿勢・条件でゆっくりと両測定面を軽く測定ワークに接触させ、ラチェットストップをゆっくり3~5回まわします。測定物の変形を避けるため、接触時はラチェットストップをゆっくり回すようにします。

5.目盛を読み取ります。

シンブル目盛はスリーブの基準線とシンブルの目盛線が合致している箇所を読み取ります。ずれている場合は基準線の下の目盛を読みます。スリーブ目盛は見えている最大値を読みます。

目盛を読む際は、必ず正面から読むようにします。図の様に眼の位置を(A)(B)(C)と変えると目盛の合致位置が変わってくる為、目盛を読み取る際には、眼の位置による誤差が起こらない様にスリーブの基準線とシンブルの目盛線の合致点の垂直上(B)の位置から目盛を読み取って下さい。


マイクロメータ
マイクロメータ

マイクロメータ

正しい使い方 動画

マイクロメータ ラチェットストップの回し方