ノギスの正しい使い方、読み方と注意点

ものづくりの現場やDIYなどさまざまなシーンで使用されているとてもポピュラーな測定工具、ノギス。ノギスとは何か、その特徴や種類、正しい使い方など、ノギスの概要をわかりやすく解説します。

ノギスとは?

ノギスという名称は、バーニヤ目盛を発明したポルトガルの数学者ノニウス(Petrus Nonius)の名前が由来だといわれています。
構造は主に外側用ジョウと内側用ジョウを備えもつ本尺、スライダからなっています。ノギス一つで、測定物の外側寸法 、内側寸法、深さ寸法、段差寸法を測定することができます。本尺目盛にスライダ上のバーニヤ目盛を組み合わせることで、より細かく読み取ることが可能です。一般的なアナログタイプのノギスの最小読取値は、0.05 mm。0.02 mm単位を読み取るタイプも登場し、用途に応じて使い分ける事も可能です。現在は0.01 mm単位を表示するデジタルタイプもあり、ノギスの利便性は向上してきています。測定範囲は通常0~300 mm、長尺では2000 mmまで測定できるものがあります。


ノギスとは? M形標準ノギス ABSクーラントプルーフキャリパ

測定例 ノギス一つで4役を果たす

ノギスは、測定物の外側、内側、段差、深さの4つを測定することができます。わかりやすいように測定例を写真で紹介します。
外側測定
2つの外側用ジョウで測定物をはさむようにして行います。
内側測定
2つの内側用ジョウを測定物に差し込んで行います。
段差測定
段差用測定面(本尺の左端およびスライダの左端)を使って行います。
深さ測定
デプスバーを用いて行います。


測定例 ノギス一つで4役を果たす 外部測定 内部測定 段差測定 深さ測定

標準ノギスのほかに専用ノギスも種類豊富

先述のM形やデジタルタイプなどの標準ノギスのほかに、さまざまな種類の専用ノギスがあります。
代表的な種類を例に挙げると、不定形の狭い寸法間の測定に用いる「ポイント」、段違いの測定に用いる「オフセット」、深さを測定する「デプスゲージ」などがあります。
ほかにも下図のように、細溝径の測定、段違い穴部の内径測定、段違い部の測定など、使用目的に応じたさまざまなタイプがあります。


標準ノギスのほかに専用ノギスも種類豊富 ポイント オフセット デプスゲージ ブレード C形 CN形

ノギスの正しい使い方と注意点

ここでは、M形標準ノギスを例に、主な使い方と注意点を解説します。
【使用前の確認】
1.スライダの作動
はじめに各測定面、本尺摺動面などを清掃してください。
全測定範囲においてスライダの動きにムラがなくなめらかに動くことを確認します。また、スライダが摺動面に対して上下方向にがたつきがないかも確認してください。


ノギスの正しい使い方と注意点 使用前の確認 スライダの作動

2.外側用測定面間の隙間
外側用測定面を閉じ、光にかざして背面から観察してください。光が漏れない、または均等に淡い光が見えるかを確認します。また、ジョウの先端が変形していないかも確認してください。


ノギスの正しい使い方と注意点 使用前の確認 外側用測定面間の隙間

3.内側用測定面間の隙間
斜めから観察し、内側用測定面の隙間が均等で先端部が変形していないかを確認します。


ノギスの正しい使い方と注意点 使用前の確認 内側用測定面間の隙間

4.ゼロ点確認
外側用測定面を閉じ、本尺とバーニヤのゼロ目盛線が合致することを確認します。目盛線どうしの合致を見る場合は、必ず真正面(A)から読み取るようにしてください。斜め方向(B)から読み取ると視差(Δx)が生じてしまいます。


ノギスの正しい使い方と注意点 使用前の確認 ゼロ点確認

【目盛の読み方】
バーニヤ目盛のゼロ目盛線が指す本尺目盛の値(1 mm単位)を読み取ります。
本尺目盛と一致したバーニヤ目盛の値(0.05 mm単位)を読み取ります。
読み取った本尺目盛とバーニヤ目盛の値を足して測定値とします。


ノギスの正しい使い方と注意点 目盛の読み方

【外側測定】


ノギスの正しい使い方と注意点 外側測定

1.外側用ジョウに測定物を差し込み、適正で均一な測定力で測定面を測定物に密着させます。
2.測定物をはさんだままの姿勢で目盛を読み取ります。
※注意点
・必要以上の測定力をかけないでください。測定力が強すぎるとジョウが傾いて測定誤差が生じてしまいます。


ノギスの正しい使い方と注意点 目盛の読み方 注意点

・測定物を斜めにはさまないでください。傾いてしまうと測定誤差が生じます。


ノギスの正しい使い方と注意点 外側測定 注意点

・測定物は本尺の基準端面にできるだけ近いところではさんでください。外側用ジョウの先端付近ではさむと測定誤差が拡大しやすくなります。


ノギスの正しい使い方と注意点 目盛の読み方 注意点

【内側測定】


ノギスの正しい使い方と注意点 内側測定

1.内側用ジョウを測定物に差し込み、適正で均一な測定力で測定面を測定物に密着させます。
2.測定物を密着させたままの姿勢で目盛を読み取ります。
※注意点
・内側用ジョウは測定物にできるだけ深く差し込んでください。


ノギスの正しい使い方と注意点 内側測定 注意点

・内径の測定時は、測定面を密着させ、目盛が最大になった時の値を読み取ってください。


ノギスの正しい使い方と注意点 内側測定 注意点

・溝幅の測定時は、測定面を密着させ、目盛が最小になった時の値を読み取ってください。


ノギスの正しい使い方と注意点 内側測定 注意点

【段差測定】


ノギスの正しい使い方と注意点 段差測定

1.段差測定面(本尺側)を測定物に密着させます。
2.段差測定面(スライダ側)が測定物(段差面上)に突き当たるまでスライダを動かします。
3.測定物に密着させたままの姿勢で目盛を読み取ります。
※注意点
・測定物の段差に対して、段差測定面全体(①②)を測定物に密着させてください。


ノギスの正しい使い方と注意点 段差測定 注意点

・デプスバーは測定物との接触面積が小さく安定した姿勢で保持することが難しいため、デプスバーによる段差測定は推奨しません。


ノギスの正しい使い方と注意点 段差測定 注意点

【深さ測定】


ノギスの正しい使い方と注意点 深さ測定

1.深さ測定面(本尺側)を測定物に密着させます。
2.深さ測定面(デプスバー側)が突き当たるまでスライダを動かします。
3.測定物に密着させたままの姿勢で目盛を読み取ります。
※注意点
・ノギスの深さ測定面は狭く不安定です。測定物に対して直角になるよう密着させてください。
※オプション品(デプスベースアタッチメント)を使用することで、深さ測定を正確・簡単に行うことができます。


ノギスの正しい使い方と注意点 深さ測定 注意点

【使用後の注意】
・測定面、基準端面、摺動面などの汚れを清掃してください。
・長期間使用しない場合は、汚れをよく拭き取って防錆油を薄く塗布して保管してください。
・高温、低温、多湿になる場所、直射日光の当たる場所を避けて保管してください。

正しい使い方 動画

デジタルノギスの正しい使い方 直接測定・比較測定編

デジタルノギスの正しい使い方 段差測定編