真円度測定機の基礎知識
真円度
幾何学的に正しい円と比較した場合の、円形形体の狂いの大きさ
平面度
幾何学的に正しい平面と比較した場合の、平面形体の狂いの大きさ
同心度
データム円の中心に対する円形形体の中心の位置の狂いの大きさ(平面形体の場合)
真直度
幾何学的に正しい直線と比較した場合の、直線形体の狂いの大きさ
円筒度
幾何学的に正しい円筒と比較した場合の、円筒形体の狂いの大きさ
同軸度
データム軸直線と比較した場合の、同一直線上にあるべき軸線の狂いの大きさ
直角度
データム直線、またはデータム平面に対して直角な幾何学的直線、または幾何学的平面から直角であるべき直線形体、または平面形体の狂いの大きさ
円周振れ
データム軸線を軸とする回転面をもつべき対象物、またはデータム軸線に対して垂直な円形平面であるべき対象物をデータム軸直線の周りに回転したとき、その表面が指定した位置、または任意の位置で指定した方向に変位する大きさ
全振れ
データム軸直線を軸とする円筒面をもつべき対象物、データム軸直線に対して垂直な円形平面であるべき対象物を、データム軸直線を中心に回転させたとき、表面が指定した方向に変位する大きさ
測定前の調整について
心出し調整
偏心による測定誤差を防ぐには、心出し調整が必要になります。心出し調整は、測定する対象物箇所の中心と測定機の回転軸とを一致させて行います。
偏心補正機能がある測定機の場合
図:偏心量と真円度誤差
水平出し調整
回転軸に対する対象物の軸の傾きは、測定する箇所の横断面が楕円として現れる原因となります。水平出し調整は、対象物の軸と回転軸とを平行に調整させて行います。
傾きと楕円誤差
図:傾きと楕円誤差
真円度の評価方法
半径法によって真円度を評価するには、その中心を明確に定義する必要があります。評価方法としては、以下の4つがあります。
LSC最小二乗中心法
測定図形に対して、偏差の二乗和が最小となる円を一つ当てはめ、その円の中心座標位置を測定図形の中心と考え、これに同心で測定図形に内接および外接する二円の半径差を真円度とする方法
MZC最小領域中心法
測定図形を挟む二円の同心円の半径差が最も小さくなるように二円の中心座標の位置を探し出し、この中心座標を測定図形の中心と考え、このときの二円の半径差を真円度とする方法
JIS B0621で規定されている方法
MCC最小外接円中心法
測定図形に外接する円を決定し、その円の中心を測定図形の中心と考え、それと同じ中心をもち、測定図形に内接する円を描き、二つの円の半径差を真円度とする方法
MIC最大内接円中心法
測定図形に内接する円を決定し、その円の中心を測定図形の中心と考え、それと同じ中心をもち、測定図形に外接する円を描き、二つの円の半径差を真円度とする方法
フィルタのカットオフ値の違いによる真円度値の差
フィルタのカットオフ値が異なると真円度値にも大きく影響するため、使用用途に適したフィルタを設定する必要があります。
フィルタなし
低域フィルタ
帯域フィルタ
規格によるフィルタの違い
2CR | 位相補償 (ガウシアンフィルタ) |
|
---|---|---|
JIS | B7451: 1997 | B0682-2: 2017 |
減衰率 | 75% | 50% |
記号および用語
JIS B 0682-1:2017 付属書A
記号 | 用語[英文名(参考)] |
---|---|
LSCI | 最小二乗基準円 Least squares reference circle |
LSCY | 最小二乗基準円筒 Least squares reference cylinder |
LSLI | 最小二乗基準直線 Least squares reference line |
LSPL | 最小二乗基準平面 Least squares reference plane |
LCD | 円筒度曲面の偏差 Local cylindricity deviation |
LFD | 平面度曲面の偏差 Local flatness deviation |
LRD | 真円度曲線の偏差 Local roundness deviation |
LSD | 真直度曲線の偏差 Local straightness deviation |
MICI | 最大内接基準円 Maximum inscribed reference circle |
MICY | 最大内接基準円筒 Maximum inscribed reference cylinder |
MCCI | 最小外接基準円 Minimum circumscribed reference circle |
MCCY | 最小外接基準円筒 Minimum circumscribed reference cylinder |
MZCI | 最小領域基準円 Minimum zone reference circles |
MZCY | 最小領域基準円筒 Minimum zone reference cylinder |
MZLI | 最小領域基準直線 Minimum zone reference lines |
MZPL | 最小領域基準平面 Minimum zone reference planes |
UPR | 1周当りの山数(アンジェレーション数) Undulation per revolution |
パラメータおよび記号
JIS B 0682-1:2017 付属書A
記号 | 用語[英文名(参考)] | 基準注) | |||
---|---|---|---|---|---|
最小領域 | 最小二乗 | 最小外接 | 最小内接 | ||
CYLtt | 円筒テーバ測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
STRsg | 母線方向の真直度測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
STRIc | 母線方向の局部真直度測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
CYLp | 円筒度曲面の山高さ測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
FLTp | 平面度曲面の山高さ測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
RONp | 真円度曲線の山高さ測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
STRp | 真直度曲線の山高さ測定値 | ̶ | ◯ | ̶ | ̶ |
CYLt | 円筒度測定値 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
FLTt | 平面度測定値 | ◯ | ◯ | - | - |
RONt | 真円度測定値 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
STRt | 真直度測定値 | ◯ | ◯ | - | - |
CYLv | 円筒度曲面の谷深さ測定値 | - | ◯ | - | - |
FLTv | 平面度曲面の谷深さ測定値 | - | ◯ | - | - |
RONv | 真円度曲線の谷深さ測定値 | - | ◯ | - | - |
STRv | 真直度曲線の谷深さ測定値 | - | ◯ | - | - |
CYLq | 二乗平均平方根円筒度測定値 | - | ◯ | - | - |
FLTq | 二乗平均平方根平面度測定値 | - | ◯ | - | - |
RONq | 二乗平均平方根真円度測定値 | - | ◯ | - | - |
STRq | 二乗平均平方根真直度測定値 | - | ◯ | - | - |
STRsa | 中心軸線の真直度測定値 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
注)パラメータを求める基準(基準円、基準円筒、基準直線、基準平面など)。