表面粗さの基礎知識

JIS B 0601:2013 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語、定義および表面性状パラメータ

JIS B 0632:2001 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-位相補償フィルタの特性

JIS B 0633:2001 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-表面性状評価の方式および手順

JIS B 0651:2001 製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-触針式表面粗さ測定機の特性

触針式表面粗さ測定機の特性
JIS B 0651:2001 (ISO 3274:1996)

触針の形状

理想的な触針の形状は球状先端をもつ円すいである。

先端半径:rtip=2 μm、5 μm、10 μm

円すいのテーパ角度:60°、90°

理想的な測定機では、特別な指示がない限り、円すいのテーパ角度は60°

静的測定力

触針の平均位置における測定力:0.75 mN

測定力変化の割合:0 N/m

標準特性値:触針の平均値における静的測定力

触針の先端曲率半径の
呼び値
μm
触針平均位置における
静的測定力
mN
静的測定力の変化の
割合の許容差
mN / μm
2 0.75 0.035
5 0.75 (4.0)注1 0.2
10

注1:触針の平均位置における静的測定力の最大値は、付け替え方式の触針など、特殊な構造のプローブでは、4.0 mNとする。

カットオフ値と触針先端半径の関係

粗さ曲線用カットオフ値λc、触針先端半径r tip、およびカットオフ比λc/λsの関係

λc
(mm)
λs
(μm)
λc/λs 最大 rtip
(μm)
最大サンプリング間隔
(μm)
0.08 2.5 30 2 0.5
0.25 2.5 100 2 0.5
0.8 2.5 300 2注1 0.5
2.5 8 300 5注2 1.5
8 25 300 10注2 5

注1:Ra>0.5 μmまたはRz>3 μmの表面に対しては、通常、r tip=5 μmを用いても測定結果に大きな差を生じさせない。

注2:カットオフ値λsが2.5 μmおよび8 μmの場合、推奨先端半径をもつ触針の機械的フィルタ効果による減衰特性は、定義された通過帯域の外側にある。したがって触針の先端半径または形状の多少の誤差は、測定値から計算されるパラメータの値にはほとんど影響しない。
特別なカットオフ比が必要な場合には、その比を明示しなければならない。

位相補償フィルタの特性
JIS B 0632:2001 (ISO 11562:1996)

輪郭曲線のためのフィルタは、位相遅れ(輪郭曲線が波長に依存してひずむ原因)のない位相補償フィルタ。
位相補償フィルタの重み関数は、カットオフ値で50%の振幅伝達率となる正規(ガウス)分布である。

データ処理の流れ

輪郭曲線の種類
JIS B 0601:2013 (ISO 4287:1997, Amd.1:2009)

断面曲線

測定断面曲線にカットオフ値λsの低域フィルタを適用して得られる曲線

粗さ曲線

カットオフ値λcの高域フィルタによって、断面曲線から長波長成分を遮断して得た輪郭曲線

うねり曲線

断面曲線にカットオフ値λfおよびλcの輪郭曲線フィルタを順次かけることによって得られる輪郭曲線。λf輪郭曲線フィルタによって長波長成分を遮断し、λc輪郭曲線フィルタによって短波長成分を遮断する。

パラメーターの定義
JIS B 0601:2001 (ISO 4287:1997)

高さ方向のパラメータ(山および谷)

断面曲線の最大山高さ Pp

粗さ曲線の最大山高さ Rp

うねり曲線の最大山高さ Wp

基準長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値

断面曲線の最大谷深さ Pv

粗さ曲線の最大谷深さ Rv

うねり曲線の最大谷深さ Wv

基準長さにおける輪郭曲線の谷深さZvの最大値

断面曲線の最大高さ Pz

粗さ曲線の最大高さ Rz

うねり曲線の最大高さ Wz

基準長さにおける輪郭曲線の最大山高さZpと最大谷深さZvとの和

※旧JIS規格やISO4287:1984では、記号Rzは「十点平均粗さ」を指示するために使われていた。新旧規格による測定値の差が、
無視できるほど小さいとは限らないので、注意しなければならない。(図面の指示は新旧どちらの規格で指示されているのか確認要)

断面曲線要素の平均高さ Pc

粗さ曲線要素の平均高さ Rc

うねり曲線要素の平均高さ Wc

基準長さにおける輪郭曲線要素の高さZtの平均値

断面曲線の最大断面高さ Pt

粗さ曲線の最大断面高さ Rt

うねり曲線の最大断面高さ Wt

評価長さにおける輪郭曲線の山高さZpの最大値と谷深さZvの最大値との和

高さ方向のパラメータ(高さ方向の平均)

断面曲線の算術平均高さ Pa

粗さ曲線の算術平均高さ Ra

うねり曲線の算術平均高さ Wa

基準長さにおけるZ(x)の絶対値の平均

断面曲線の二乗平均平方根高さ Pq

粗さ曲線の二乗平均平方根高さ Rq

うねり曲線の二乗平均平方根高さ Wq

基準長さにおけるZ(x)の二乗平均平方根

断面曲線のスキューネス Psk

粗さ曲線のスキューネス Rsk

うねり曲線のスキューネス Wsk

Pq, Rq, Wqの三乗によって無次元化した基準長さにおけるZ(x)の三乗平均

上記の式はRskの定義である。PskおよびWskも同様Psk,RskおよびWskは、偏り度(高さ方向の確率密度関数の非対称性の尺度)である。

断面曲線のクルトシス Pku

粗さ曲線のクルトシス Rku

うねり曲線のクルトシス Wku

Pq, Rq, Wqの四乗によって無次元化した基準長さにおけるZ(x)の四乗平均

上記はRkuの定義である。PkuおよびWkuも同様Pku, RkuおよびWkuは、縦座標値の確率密度関数の鋭さの分量

複合パラメータ

断面曲線の二乗平均平方根傾斜 P⊿q

粗さ曲線の二乗平均平方根傾斜 R⊿q

うねり曲線の二乗平均平方根傾斜 W⊿q

基準長さにおける局部傾斜dz/dxの二乗平均平方根

横方向のパラメータ

断面曲線要素の平均長さ PSm

粗さ曲線要素の平均長さ RSm

うねり曲線要素の平均長さ WSm

基準長さにおける輪郭曲線要素の長さXsの平均

JISだけのパラメータ

十点平均粗さ RzJIS

カットオフ値λcおよびλsの位相補償帯域通過フィルタを適用して得た基準長さの粗さ曲線において、最高の山頂から高い順に5番目までの山高さの平均と最深の谷底から深い順に5番目までの谷深さの平均との和

記号 用いた輪郭曲線
RzJIS82 測定したままの輪郭曲線による
RzJIS94 位相補償高域フィルタ適用の輪郭曲線による

中心線平均粗さ Ra75

測定曲線に減衰率12 db/octでカットオフ値λcのアナログ高域フィルタを適用して得られる曲線で、平均線からの偏差で表した粗さ曲線(75%)を用いて得られる算術平均高さ

負荷曲線と確率密度関数とそれらに関連するパラメータ

負荷曲線(アボット負荷曲線)
切断レベルcの関数として表された輪郭曲線の負荷長さ率の曲線

断面曲線の負荷長さ率 Pmr(c)

粗さ曲線の負荷長さ率 Rmr(c)

うねり曲線の負荷長さ率 Wmr(c)

評価長さに対するレベルcにおける輪郭曲線要素の負荷長さMl(c)の比率

断面曲線の切断レベル差 Pδc

粗さ曲線の切断レベル差 Rδc

うねり曲線の切断レベル差 Wδc

与えられた負荷長さ率の二つの切断レベルの間の垂直の距離

断面曲線の相対負荷長さ率 Pmr

粗さ曲線の相対負荷長さ率 Rmr

うねり曲線の相対負荷長さ率 Wmr

基準とする切断レベルc0と輪郭曲線の切断レベルRδcによって決まる負荷長さ率

確率密度関数(振幅分布曲線)
評価長さにわたって得られる高さZ(x)の確率密度関数

粗さパラメータの基準長さ
JIS B 0633:2001 (ISO 4288:1996)

表1 非周期的な輪郭曲線の粗さパラメータRa, Rq, Rsk, Rku,R⊿q並びに負荷曲線および確率密度関数とそれらに関連するパラメータの基準長さ

Ra (μm) 基準長さ lr (mm) 評価長さ ln (mm)
(0.006)<Ra≦0.02
0.02<Ra≦0.1
0.1<Ra≦2
2<Ra≦10
10<Ra≦80
0.08
0.25
0.8
2.5
8
0.4
1.25
4
12.5
40

表2 非周期的な輪郭曲線の粗さパラメータRz, Rv, Rp, Rc, Rtの基準長さ

Rz, Rz1max. (μm) 基準長さ lr (mm) 評価長さ ln (mm)
(0.025)<Rz,
Rz1max.≦0.1
0.1<Rz, Rz1max.≦0.5
0.5<Rz, Rz1max.≦10
10<Rz, Rz1max.≦50
50<Rz, Rz1max.≦200
0.08
0.25
0.8
2.5
8
0.4
1.25
4
12.5
40

1)Rzは、Rz, Rv, Rp, Rc, Rtを測定するときに用いる。

2) Rz1maxは、Rz1max, Rv1max, Rp1max, Rc1maxを測定するときだけに用いる。

表3 周期的な粗さ曲線の粗さパラメータの測定および周期的、非周期的な輪郭曲線のRsm測定のための基準長さ

Rsm (mm) 基準長さ lr (mm) 評価長さ ln (mm)
0.013<Rsm≦0.04
0.04<Rsm≦0.13
0.13<Rsm≦0.4
0.4<Rsm≦1.3
1.3<Rsm≦4
0.08
0.25
0.8
2.5
8
0.4
1.25
4
12.5
40

基準長さの指定がない場合の基準長さ決定手順

図1 基準長さの指定がない場合の非周期的な面における基準長さ決定手順

図2 基準長さの指定がない場合の周期的な面における基準長さ決定手順