三次元測定機用スタイラスの基礎知識

より正確で高精度な測定をするためにはスタイラスが非常に重要な要素となります。ここではスタイラスを選定いただく際のヒントとなる豆知識をご紹介いたします。

スタイラスとは、測定物に接触する測定子のことを指し、一般的に軸とボールで構成されています。スタイラスを測定物と接触させることでプローブが機能し、このとき生じる信号により測定値を取得します。測定物によって使用するスタイラスの形状や寸法を選択することになりますが、どのような場合もスタイラスが高い剛性を持つこと、および先端形状が完全な球形であることが重要なポイントとなります。

スタイラスの選定

より高精度な測定をしていただくため、スタイラスの選定におかれましては下記の事項を基準にお選びいただくことを推奨いたします。

1. スタイラス長はできるだけ短くする

スタイラスの曲がりやたわみが大きいほど精度は悪くなります。どのようなスタイラスの構成でも、出来るだけ短いスタイラスでの測定をお勧めいたします。

2. 結合部を出来るだけ少なくする

スタイラスを組み合わせたり、エクステンションを組み合わせることで、たわみが発生する可能性が高まります。スタイラスを構成するパーツは最小限にして使用することをお勧めいたします。

3. 出来るだけ大きなボールを使用する

より大きなボールを使用する事により、ボールと軸とのクリアランスが広がり測定物に対し軸が干渉することを低減することが出来ます。また、測定物の表面仕上げへの影響も少なくなります。

スタイラスの素材

スタイラスには用途にあわせ、軸、ボール、その他付属品に対し、最適な材質を使用しています。ここでは主に使用されている材質の特徴、メリットをご紹介いたします。

1.軸

スタイラスのたわみを抑えるには、軸の剛性を出来る限り強くする必要があります。ミツトヨでは下記の材質の物をご用意しています。

  1. 超硬
    小さな軸径のスタイラスで優れた剛性を発揮し、ほとんどの標準的な用途に最適です。大きな軸径および、長いスタイラスでは重量に注意する必要があります。
  1. スチール
    剛性に優れ、重量が問題にならないような場合に標準的に用いられます。
  1. セラミック
    軽くステンレスと同等の剛性をもった素材のため、主にボールサイズが大きく軸が長いスタイラスで用いられます。熱安定性に優れ、温度環境に左右されず精度の高い測定が可能です。
  1. カーボンファイバ
    カーボンファイバスタイラスは超硬スタイラスの20%程度の重量であるため、長いスタイラスに適した材質です。熱安定 性にも優れ、使用環境に左右されずご使用いただけます。また、測定物の表面仕上げへの影響も少なくなります。

2. ボール

スタイラス球の材質を選ぶ際には測定方法とワークの素材を考慮する必要があります。

  1. ルビー
    ルビーボールは表面が特に滑らかで、圧縮強度が強く、機械的な腐食に対して優れた耐性を有しています。
    多くの測定物に対し、ボールの材質として最適ですが、アルミニウム、鋳鉄に対してはスキャニング測定時に摩耗が発生することがあります、そのため、アルミニウムや鋳鉄素材の測定を行う際は、下記の素材のボールのご使用をお勧めいたします。
  1. 窒化珪素
    ルビーに類似した特性を有し、硬度が非常に高く摩耗に強いセラミック材です。アルミニウムに凝着しないため、ルビーのような凝着摩耗が発生しません。しかし、スチール面に対しては摩耗が顕著となるため、窒化珪素の使用はアルミニウムに限定することをお勧めします。
  1. ジルコニア
    ジルコニアは特に優れた硬度を誇るセラミック材でルビーに匹敵する硬度と摩耗耐性を有します。鋳鉄製の部品のスキャニングをよく行うような場合に最適です。

スタイラスのキャリブレーション

測定物に対し適切なスタイラスを選定いただいても、測定の前に使用するプローブのキャリブレーションを行わなければ正確な測定結果を得ることはできません。
キャリブレーションで得たボールの直径値と位置情報を三次元測定機のソフトウエアに登録することで初めてスタイラスがその性能を発揮します。

  1. キャリブレーションのメカニズム
    専用のプローブキャリブレーションプログラムを用いて、それぞれのボールスタイラス球の中心位置と直径を計算します。
    構成するスタイラス球で基準球を測定し、スタイラス球の真の直径を求め、測定機のソフトウエアに登録します。通常、基準球には直径の値付けされた精密な球を使用し、キャリブレーションされた球の値を、計測ソフトウエアに入力します。あらゆる方向の測定をする場合、基準球のいくつかの点を用いてスタイラスの校正をします。スキャニングシステムでは非常に多くの点を取得する必要があります。これらの手順を踏むことにより、スタイラス球の補正された有効直径と機械の座標に対するスタイラス球の中心位置が設定され、正確な測定を行うことが可能になります。

スタイラスに関する注意事項

  1. スタイラスの長さ、重さ、ならびに三次元測定機本体の駆動速度や加速度によっては誤入力の可能性がありますのでご使用の際はご注意ください。
  2. ディスクスタイラスは、球体の一部を用いており、エッジやアンダーカットを測定する際に使用します。このスタイラスは、一つの直径のみを補正するため、実際の測定はX、Y方向のみとなります。Z方向の測定には使用できません。またスタイラスチェンジャーと併用する必要があります。
  3. 円筒スタイラスの使用には制限があります。
  4. 制限事項の詳細については弊社営業所にお問い合わせください。
  5. M2~M5シリーズの測定子は基本的にはそれぞれのプローブのねじサイズに合ったものをお選びください。
    変換アダプタ等を使用してねじサイズの異なる測定子を取付けることができる場合もありますが、その際には装着するプローブの取扱説明書をご参照いただき、それぞれのプローブの仕様に合わせた測定子構成を選択してください。また、取付け方法について不明な部分がございましたら別途弊社営業所までお問い合わせください。