マイクロメータヘッドの基礎知識

選択のポイント

選択のポイントには、測定範囲、測定面、ステム部、読み取り、シンブルの大きさなどがあります。
それぞれの内容を参考に、目的にあったマイクロメータを選択してください。

ステム

  1. マイクロメータヘッドを保持する部分で、形状では「ストレートタイプ」と「ナット付タイプ」に分類されます。ステムのサイズは、マイクロメータヘッド本体に合わせ最適な寸法に設計されており、ステム直径は軸の寸法許容差h6を採用しています。
  2. 取付け方法は、「ナット付きステム」タイプが簡単で確実に固定できます。「ストレートステム」タイプでは、割り締めや接着などの加工が必要ですが、適用範囲が広く、最終取付け時に前後方向へ多少位置調整ができる利点があります。
  3. 汎用的に使用できるいくつかのタイプの取付け金具を、別売品としてご用意しています。

測定面

  1. 測定装置として使用されるケースでは、平面タイプが一般的に使用されています。
  2. 送り装置として使用する際、球面タイプを採用することでマイクロメータヘッド取付け部分の傾きによる誤差を最小限におさえることができます(図-A)。同じ工夫ですが、スピンドル側を平面タイプにし、相手に超硬ボール等を取り付ける方法もあります(図-B)。
  3. 相対位置関係が比較的不安定な場合や、より精度を必要とする場合は、回転防止装置付きをお薦めします(図-C)。
  4. ストッパのように耐久性を必要とする場合は、平面対平面タイプが優れています。

スピンドル直進

スピンドル直進タイプは測定物に対してねじれの影響を与えないため、測定物の回転を防ぎ、変形、摩耗がおさえられます。

スピンドルピッチ

  1. 標準品(0.5 mmピッチ)
  2. 1 mmピッチ
    位置決めなどで、素早いセッティングができます。また、0.5 mmの読み誤りを防ぐことができます。ねじ山が大きいので耐荷重にも優れています。
  3. 0.25 mm、0.1 mmピッチ
    微動送りや細かい位置合わせに便利です。

定圧装置

  1. 測定器として使用する場合には、定圧装置付をお薦めします。
  2. ストッパとして使用する場合や、省スペースを優先する場合には「定圧装置なし」の使用もご検討ください。

クランプ

  1. マイクロメータヘッドをストッパとして使用する場合には、クランプ付きを使用されたほうが、緩みによるトラブルを防げます。また、クランプ操作によるスピンドルの位置変化を防ぐ構造になっていますので、安心してご使用できます。

測定範囲(ストローク)

  1. 予想されるストロークに対して、余裕をもって測定範囲を選んでください。標準形では、5 mm~50 mmまで6段階を準備しています。
  2. 予想されるストロークが2 mm~3 mmと小さい場合でも、取付けスペースに十分余裕がある場合には、25 mm機種を選ぶ方が経済的です。
  3. 50 mmを超えるロングストロークが必要な場合には、ゲージブロックを併用することで解決できます(図-D)。
  1. このカタログでは、シンブルの可動範囲(ストロークエンド)を破線で示しています。ストロークエンドの場合、シンブル側がその線の位置まで移動することを、治具設計時に考慮してください。

極微動

  1. マニュピュレータなど、極微動を必要とする場合には、専用品が用意されています。

シンブル外径

  1. シンブルの直径は、操作性と位置決めの“細かさ”に大きく影響します。小径のシンブルは素早い位置決めができ、大径のシンブルでは細かい位置決めと読み取りができます。また、大径のシンブルにスピーダを取り付け、操作性を向上させている機種もあります。

読み取り

  1. 測定器として使用する場合や移動量を指定されている場合には、目盛仕様に注意する必要があります。
  2. 外側マイクロメータと同じ目盛仕様が「正目盛」で標準タイプです。これは、スピンドルが引き方向で目盛値が増加をします。
  3. 逆に、スピンドルを押し出す方向で増数になるのが「逆目盛」仕様です。
  4. 正逆両方向での読み取りが楽にできるのが「正逆目盛」仕様で、数字の色を各々黒・赤で表示し、読み取りが楽になっていきます。
  5. 測定値を直接読み取ることのできるカウンタ付きやデジタル表示タイプもあります。読み誤りがないことはもちろん、デジタル表示タイプでは測定データの外部出力により、測定値の記録や統計演算ができます。

取付け金具の自製要領

マイクロメータヘッドの取付けには、ステム部を固定しますが、その取付け方法は精度的に安定し、内部に無理のない方法をとる必要があります。代表的な取付け方法として、次の3種類がありますが、③の方法はあまりお薦めできません。できるだけ①または②の方法をご採用ください。

特別注文品(製作例のご紹介)

マイクロメータヘッドは非常に広い分野で使用されており、お客様のニーズにお応えするため豊富な機種を用意しておりますが、特別なニーズにお応えするため、広くカスタム品を製作しております。1個からでも製作いたしますので、お気軽にご相談ください。

1. スピンドル形状の例

2. ステム形状の例

取付け方法や取付け部の形状にあわせて、さまざまなステム形状に対応いたします。

3. 目盛加工例

逆目盛、縦目盛などさまざまな目盛加工にも対応できます。
加工例にないものでもご相談ください。

4. 指定ロゴタイプ

指定ロゴタイプの表示もできます。

5. カップリング取付け例

モータドライブ取付け用カップリングにも対応できます。

6. シンブル取付け方法

シンブルの取付け方法もラチェット・止めねじ・六角穴付きボルトなどができます。

7. スピンドルピッチ加工

スピンドルピッチは0.5 mmが標準ですが、早送りのできる1 mmや、微動送りの0.25 mm、0.1 mmにすることができます。
また、インチピッチへの加工もできます。ご相談ください。

8. ねじ部オイル

お客様のご指定による潤滑油などにも対応いたします。

9. オールステンレス製

ご希望により、オールステンレス製マイクロメータヘッドも製作いたします。

10. 簡易包装

OEMなど大量のご注文の際には、簡易包装で納品すること ができます。

マイクロメータヘッドの耐荷重

マイクロメータヘッドの耐荷重は取付け方法によって大きく変わります。また、静荷重か動荷重か、作動させて使用するかストッパとして使用するかなど使用条件によっても大きく変わります。したがって、何N(kgf)というように定量的に定めることができません。ここでは、ミツトヨがお薦めする耐荷重限度(精度保証範囲内で読み取り装置として使用する場合、手動10万回転以内)と小形マイクロメータヘッドを使って静荷重試験を行った結果をご紹介します。

1. 推奨耐荷重限度

耐荷重限度
標準形 スピンドルピッチ0.5 mm 39.2 N(4 kgf)
高機能形 スピンドルピッチ0.1 mm/0.25 mm 19.6 N(2 kgf)
スピンドルピッチ0.5 mm 39.2 N(4 kgf)
スピンドルピッチ1.0 mm 58.8 N(6 kgf)
スピンドルピッチ直進式 19.6 N(2 kgf)
MHF極微動用(差動機構付き)

※MHTのみ19.6N(2kgf)程度まで

2. マイクロメータヘッドの静荷重試験(試験には、MHSを使用)

〈試験方法〉
図のようにマイクロメータヘッド本体をセットし、材料試験機にて破損あるいは脱落までP方向より荷重をかけたときの値を測定。(試験は精度保証範囲を考慮に入れず、破損あるいは脱落するまで荷重をかけています。)

締付ナット方式

スリ割締付方式

ねじ止め方式

取付け方法 破損・脱落荷重
締付ナット方式 8.63~9.8 kN(880~1000 kgf)で本体破損
スリ割締付方式 0.69~0.98 kN(70~100 kgf)で取付け金具より脱落
ねじ止め方式 0.69~1.08 kN(70~110 kgf)で止めねじ破損

※破損・脱落荷重はあくまで参考値とお考えください。