硬さ試験機の基礎知識
硬さの定義
(1)ビッカース硬さ
ビッカース硬さは、任意の試験力で試験できる最も応用範囲の広い試験方法です。特に9.807N以下の微小硬さの応用分野は非常に多くなっています。ビッカース硬さは、ダイヤモンド正四角錐(対面角θ=136度)に試験力(FN)を加えて試料に押し込んだ後、圧子を取り去ったときのくぼみの対角線長さd(2方向の平均、mm)から計算される圧子と試料との接触面積(Smm2)で試験力(FN)を割った値です。kは、定数(1/g=1/9.80665)です。
ビッカース硬さの誤差は、次の式で求めることができます。なおΔd1は顕微鏡の誤差、Δd2はくぼみ読み取りの誤差、aは圧子先端の対向面によって生じる稜線の長さ、Δθの単位は度です。
(2)ヌープ硬さ
ヌープ硬さは、172°30′の対稜角と130°の横断面をもつ菱形のダイヤモンド四角錐に試験力Fを加えて試料に押し込んだ後、圧子を取り去ったときのくぼみの長い方の対角線長さd(mm)から計算されるくぼみの投影面積A(mm2)で試験力を割った値です。ヌープ硬さは、微小硬さ試験機のビッカース圧子をヌープ圧子に交換することにより測定できます。
(3)ロックウェルおよびロックウェルスーパーフィシャル硬さ
ロックウェルおよびロックウェルスーパーフィシャル硬さは、ダイヤモンド圧子(先端の円錐角120度、先端の曲率半径0.2mm)または球圧子(鋼球または超硬合金球)を用いて、まず初試験力を加え、次に試験力を加え、再び初試験力に戻したとき、前後2回の初試験力における圧子の侵入深さの差h(μm)から硬さ算出式で求めます。初試験力が98.07Nのときを、ロックウェル硬さといい、初試験力が29.42Nのときを、ロックウェルスーパーフィシャル硬さといいます。なお圧子の種類、試験力および硬さ算出式の組み合せに固有の記号を設けて、スケールといいます。JISでは、スケールまたは硬さについて規定しています。
ビッカース硬さと試料最小厚さの関係
ロックウェル/ロックウェルスーパーフィシャル硬さと試料最小厚さの関係
ロックウェル硬さの種類
スケール | 圧子 | 試験力(N) | 用途 |
---|---|---|---|
A | ダイヤモンド | 588.4 | 超硬合金、薄鋼板 肌焼鋼 鋼(100 HRB以上~70 HRC以下) |
D | 980.7 | ||
C | 1471 | ||
F | 直径1.5875 mm球 | 588.4 | 軸受けメタル、焼鈍銅 黄銅 硬アルミ合金、ベリリウム銅、リン青銅 |
B | 980.7 | ||
G | 1471 | ||
H | 直径3.175 mm球 | 588.4 | 軸受けメタル、砥石 軸受けメタル 軸受けメタル |
E | 980.7 | ||
K | 1471 | ||
L | 直径6.35 mm球 | 588.4 | プラスチック、鉛 |
M | 980.7 | ||
P | 1471 | ||
R | 直径12.7 mm球 | 588.4 | プラスチック |
S | 980.7 | ||
V | 1471 |
ロックウェルスーパーフィシャル硬さ試験機の種類
スケール | 圧子 | 試験力(N) | 用途 |
---|---|---|---|
15N | ダイヤモンド | 147.1 | 浸炭、窒化等 の鋼の薄い表面硬化層 |
30N | 294.2 | ||
45N | 441.3 | ||
15T | 直径1.5875 mm球 | 147.1 | 軟鋼、黄銅、青銅等の薄板 |
30T | 294.2 | ||
45T | 441.3 | ||
15W | 直径3.175 mm球 | 147.1 | プラスチック、亜鉛、軸受け合金 |
30W | 294.2 | ||
45W | 441.3 | ||
15X | 直径6.35 mm球 | 147.1 | プラスチック、亜鉛、軸受け合金 |
30X | 294.2 | ||
45X | 441.3 | ||
15Y | 直径12.7 mm球 | 147.1 | プラスチック、亜鉛、軸受け合金 |
30Y | 294.2 | ||
45Y | 441.3 |