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巻頭言
光のノギス!
近畿大学 工学部 電子情報工学科
准教授 岡田 和之 様


 1900年代は電子が主役のエレクトロニクス全盛期、2000年代は何が主役になるか。それは「光」ではないだろうか。これまでの電子機器の中に光を取り入れた光デバイスが威力を発揮する時代と期待している。その1つに有機ELがある。液晶・LEDに置き換わる光デバイスである。

 有機EL素子は 1μm以下の有機薄膜を2枚の電極で挟んだサンドウィッチ構造をしている。これに直流電圧を印加すると、それぞれの電極から正・負の電荷をもったキャリアが有機薄膜中へ注入され、両者が移動・結合することにより発光する。この発光をディスプレイ・照明機器などへ活用することが広く検討されている。EL素子は液晶に比べて色鮮やかで、時間応答性も優れている。また、面状発光であるため、広範囲にわたり影のできない照明も可能である。さらに、極めて薄く作製できることから曲面光源としても活用でき、デザイン性に富んだ表示・照明デバイスとして幅広い活用が期待できる。

 EL素子の発光特性には、有機膜中でのキャリアの動きが大きく関係する。有機膜中のキャリアの挙動は有機膜を多層構造にすることで制御が可能である。このため、厚さ数〜十数nmの有機膜を複数重ねた層構成にしてEL素子を作製するのが一般的である。有機薄膜の作製にはスピンコート法・インクジェット法・真空蒸着法などが用いられている。それぞれに長所・短所はあるが、膜厚を制御する点から真空蒸着法が多く採用されている。真空蒸着法では、有機材料の蒸着状況を、水晶振動子を用いたセンサ等でモニターしている。膜厚センサをEL素子に近接・設置して正確な膜厚を評価するようにしているが、作製した有機膜を直接計測しているわけではない。今後、センサが示す値に正しく膜厚作製できていることの検証も必要になろう。

 成膜された有機膜の厚さを測定・評価するには、膜表面に針を物理的に接触させて針の上下振動で表面粗さを評価する触針法を応用できるが、針を有機膜に直接接触させるため膜に傷をつける可能性が高く、柔らかい有機膜には不向きである。作製したEL素子を壊すことになりかねない。さらに、数nmの変化を正確に検出できる感度の実現も検討課題の一つである。

 非破壊で、膜の厚さを測定・評価できる計測器の一つにエリプソメーターがある。エリプソメーターは光の干渉・偏光特性を利用して膜厚を測定する機器である。有機膜を破壊することなく膜厚の計測が可能である。また、光の干渉効果を利用しているため、光の波長以下の膜厚もある程度評価できる能力を有している。しかし、甚だ高価な計測器である。現在では、可視域の光を計測光としていることが多く、数nmという可視光波長の100分の1の厚さを精度よく評価するには克服すべき点がいくつかあると感じる。もちろん、測定に用いる光の波長を短くすればよいのだが、紫外・真空紫外さらには軟X線領域の光に対応する光学系で機器を構成する必要があり、光学デバイスの開発が望まれる。エリプソメーターに限らず、光(電磁波)を用いた計測は試料に対して非接触・非破壊が可能であり、EL素子の有機膜厚の有効な評価手段となりえる。

 もう少し飛躍して夢を語ってみよう。電磁波(光)というノギスで何かを測るとする。ノギスの最小目盛は電磁波の波長と見なすことができる。世の中には波長が数百mのラジオAM波から 1nm 以下の波長をもつX線までいろいろな電磁波が存在する。これらの電磁波を自由自在に計測光とすることができるノギスがあれば、原子1個の大きさから地球の大きさまで測定可能な万能ノギスができる。非接触、非破壊、リアルタイムで計測できることも付け加えておこう。

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