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測定工具の測定誤差実例とワンポイント
弊社 品質保証部 内田 篤

 日本の製造業界において無人化、自動化、効率化など絶え間ない改善が進み、品質を上げ、原価を下げる愚直な活動をしてきた結果、高品質と高信頼のMede in Japanの製品が再び世界的に浸透して脚光を浴びてきています。同様に計測器も成長を遂げています。三次元測定機をはじめ、画像測定機などの計測機器も測定の自動化、精度の向上、測定時間も大幅に短縮され、また、測定工具であるマイクロメータやノギスなど計測器のデジタル化も進み、非常に便利な時代となっています。一方、昔から多くの方々に親しまれ使用されている測定工具が、誤った使い方をされている事例が少なくないのも実態です。本稿は、精密測定工具の誤った使用方法により発生した測定誤差について実例を紹介することで、多くの方々に正しい測定を行うための知識を理解していただき、精密測定を行う際にお役に立てれば幸いです。
1. マイクロメータ
 最もポピュラーな測定工具の代表であるマイクロメータは、アンビルとスピンドルにワークを挟み、マイクロメートル単位を簡単に測定できます。マイクロメータの測定誤差が生じる主な要因としては、以下となります。
図1
図2
  1. 測定力
     アンビルとスピンドルにワークを挟む強さが、測定誤差を発生させてしまいます。
     測定力による測定誤差を防止するためには、基点合わせおよびワークを測定する際、必ずラチェットストップを3〜5回(1.5〜2回転)使用して一定圧で挟む必要があります(図1)。また、基点確認など測定面を合致させる場合、勢いよく測定面を合致させた衝撃で精度に影響が出てしまう場合もあるので注意が必要です。
  2. ゴミや埃
     測定面にゴミや埃が付着したまま測定した値は、正しい測定値と異なります。測定前には、測定面に白紙を挟み測定面のゴミや埃を取り除いてから測定することが必要です(図2)。また、意外と見落としがちなのがワークのゴミです。
     小さなゴミや切粉も同様に測定誤差の原因となるのでゴミや切粉を除去した状態で測定が必要となります。
  3. 衝撃
     マイクロメータの測定誤差要因で、最も多い要因は衝撃です。
     マイクロメータの落下、ワークとの強い衝撃が考えられます。シンブルやフレーム部は勿論ですが、スピンドルへの衝撃は測定精度に直接影響が生じ易いので注意が必要です。
  4. 温度変化
     長さ100oの鉄の棒は、10℃の温度変化で約0.012oも寸法が伸縮します。
     温度変化は、目に見えないため気が付かないまま測定する場合があります。
     室温の変化には注意が必要ですが、特に注意するべき温度は、マイクロメータを持つ手の体温であり、体温はフレームから伝わり温度変化による測定誤差が発生してしまいます。体温による温度変化を防止するための防熱カバーが備わっていますが、温度変化を防止するためには、マイクロメータスタンドの使用を推奨します。
     マイクロメータの使用後は、切削油などを拭き取り防錆処理が必要となります。
     超硬合金の測定面に切削油などが付着したまま保管すると変色などが発生する場合がありますので保管前には清掃が必要です。
2. ノギス
 DIYが普及し、製造業のみならず個人でも所有するくらい知名度が高く一般的に広く使われている測定工具です。
 ノギスの測定誤差が生じる主な要因としては、マイクロメータと同様の4項目となりますが、ノギスは、測定軸線と本尺目盛面が同一直線上に配置されていないため、アッベの原理に従っていない測定工具で、測定誤差が生じ易いので注意が必要です。
図3

  1. 測定位置
     本尺の目盛面が離れているジョウの先端でワークを測定すると(図3)測定精度への影響が大きくなり、可能な限りジョウの根元で測定することが必要です。
  1. 測定力
     強い測定力を加えると、スライダが傾き測定誤差が生じます(図3)。測定対象であるワークの材質や形状に見合った測定力が重要となります。なお、どの程度の力でどれくらい測定値が変化するのか実際に体感し、確認してみることが測定スキル向上の近道となります。
図4

  1. 内側測定
     内側用ジョウで内径測定を行う場合、構造上から生じる測定誤差があります。図4の様にφ5oの内径を測定した場合、Δd=約0.05mmの測定誤差が生じます。小さな内径を測定する場合は、内径測定専用の測定器を使用する必要があります。
     ノギスの基本的なメンテナンスは、少量の油を含んだ布で摺動部の汚れを拭き取ることで、滑らかな摺動による正確な測定が可能となります。また、内側・外側のジョウは正確な測定を行うために精密に加工されているので僅かな衝撃でも、測定誤差の原因となるバリやかえりが発生してしまいますので、使用前には測定面を合致させた状態で照明にかざして、バリやかえり、変形を目視確認することも必要です。
3. ダイヤルゲージ
 スピンドル移動量を目盛や数値で簡単に読取ることができるため、様々な幅広い分野で使用されている測定工具です。
 マイクロメータやノギスと同様な測定誤差があげられますが、ダイヤルゲージ特有の測定誤差要因は以下となります。
  1. ゴミや埃
     様々な工業製品の摺動部には潤滑油を使用している場合が多いですが、スピンドル部への注油は塵埃などが付着してしまい作動が悪くなり測定誤差が生じる場合があります。乾いた布または少量のアルコールを含ませた布で清掃を行う必要があります。
  2. 温度変化
     ダイヤルゲージの測定誤差要因として、急激な温度変化が問題となります。
     例えば、寒い現場で使用後、暖かい測定室へ移動した際、または、寒い倉庫で使用後、暖かい室内へ移動した際には、急激な温度変化によってダイヤルゲージの内部が結露して錆が発生する場合があります。
     錆は時間経過とともに発生し、徐々にスピンドルや各摺動部の動きが悪くなり測定に影響が生じるので注意が必要です。
  3. 保治具
     見落としがちなのは保治具による測定への影響です。ワークの測定部に対してスピンドルが直角に取り付いていない場合は、測定誤差が生じます。また、保治具を手で押すなどして指針が動くようであれば明らかに保治具の剛性が不足しています。
     剛性が高く、取り付け姿勢に見合った保治具を使用し、固定する際は適切な締付トルクを守ることが正しい測定の基本です。
     ダイヤルゲージの利点は、リミットシール(図5)やリミット針を使用することにより簡単に合否判定の読み取りが可能となります。また、豊富な種類の測定子を組み合わせ、多点同時測定や連続測定など工夫次第では非常に幅広く便利な測定が可能となります。
図5
4. てこ式ダイヤルゲージ
 ダイヤルゲージと比べコンパクトであり、様々な場面で使用されている便利な測定工具です。
  1. ゴミや埃
     ダイヤルゲージと同様、測定子の可動部周辺への注油は塵埃が付着してしまい作動が悪くなり測定誤差が生じる場合があります。汚れなどの除去は油分を含んでいない布などで優しく拭きあげることが必要となります。
  2. 測定子の交換
     標準付属の測定子から長さの異なる測定子に交換した場合は、内部歯車拡大比に影響し測定誤差が生じてしまいますので機種に応じた測定子への交換が必要となります。
  3. 測定位置
     測定子の角度を変えて測定できますが、測定面と測定子が平行になるように取り付ける必要があります。
     平行に取り付けできない場合は、角度毎に補正を行う必要があります。(図6)
図6
  1. 保治具
     ダイヤルゲージと同様、剛性不足の保治具を使用した場合、測定誤差が生じる場合がありますので注意が必要となります。
     てこ式ダイヤルゲージは、目盛の読み取りが簡単であり多点同時測定や連続測定など工夫次第では非常に幅広い測定が可能であり、測定時間も短くすることが可能となりますので、生産技術部門や品質管理部門の腕の見せ所です。
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