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NEW TECHNOLOGY TREND 35



微小硬さ試験機HM-200シリーズの開発


川崎研究開発センタ 商品開発部 川添 勝
1.はじめに

 硬さ試験機は多くの材料試験機の中で最も一般的な試験方法として、研究開発から生産に至るまで広範に渡り重要な役割を果たしています。さらに硬さ試験を行う作業環境においては更なる省力化や省人化に結びつく自動化、並びに低試験力での試験に対する要望がより一層高まっています。
 ミツトヨではこれらのニーズに応えるべく、独自の力発生機構を採用した微小硬さ試験機HM-200シリーズを開発し、2006年にリリースしました。(図.1)微小硬さ試験機とは、低試験力を実現しているビッカース硬さ試験機のことで、マイクロビッカース硬さ試験機と呼ぶことがあります。
 近年の硬さ試験機に対する要求は、薄膜、微細部品の材料特性評価への対応です。微小試験力による硬さ試験においては、形成されるくぼみの大きさが非常に小さく、ビッカース硬さ試験方法では、限界にきています。解決の手段として、試験力を加えながらくぼみ形成時の圧子の侵入量より硬さを算出するマルテンス硬さが規格化されています。しかし、従来のビッカース硬さとの互換性においては、様々な議論がなされている最中であり、マルテンス硬さは、将来の硬さと言えます。HM-200シリーズは、従来の硬さと将来のマルテンス硬さの架け橋的な位置付けと考えています。
図1 微小硬さ試験機HM-200 シリーズ
図1
微小硬さ試験機HM-200 シリーズ
 本報告では、低試験力と、高ダイナミックレンジを両立させる力発生機構の特長、並びにシステム展開について報告します。

2.HM-200シリーズ展開

 HM-200シリーズは、試験力が98.07〜9807mNを提供するHM-211と低試験力を精度良く発生する圧子軸ユニットを備え0.4903〜19610mNを実現したHM-221をコアとしたシステムがあります。
 これらの試験機本体に搭載されている試験力発生装置は、従来の重錘による試験力発生機構に替わり、電磁力方式が採用されています。従来機種では、重錘の種類(数)に制限があるので、発生できる試験力の種類が限定されていたが、これにより、HM-200シリーズでは、ユーザが、無段階で設定できるようになりました。
 微小硬さ試験機 HM-211、221の主な仕様を表.1にまとめます。
表1 HM-200シリーズ仕様

表1 HM-200シリーズ仕様

3.HM-200シリーズの試験力発生機構

3-1 ビッカース硬さ試験の試験シーケンス

 ビッカース硬さ試験機では、はじめに試験の準備として、くぼみ長さ測定用顕微鏡(オクラ)により、試料表面に焦点を合わせることで、試料の高さを決定します。微小硬さ試験機では、50×の対物レンズを用いており、焦点深度(約2 μm以下)でその高さを決定できます。くぼみ付けを行うユニットは、この高さで適切に試験が行われるよう調整されています。また、試験を行う位置は、顕微鏡視野の中央となるようになっており、試料を移動して、試験位置を決定します。(図.2)
 次に、試験力を設定し、試験開始ボタンにより、くぼみ付けを行います(自動)。また、パワーターレットを装備しているHM-200シリーズでは、対物レンズから、圧子軸への切換は自動的に行われ、くぼみ付け終了後、対物レンズに自動的に切り換わります。
 最後にくぼみの頂点に測定ライン(測定顕微鏡内のガラスエッジ)を合わせ、決定ボタンを押すことで、硬さが算出されます。(くぼみが小さいほど、硬さ値は高くなります。)

図2 ビッカース硬さ試験の流れ
図2
ビッカース硬さ試験の流れ
3-2 HM-200シリーズの試験力発生機構

 HM-200シリーズは、従来の重錘式試験力発生機構に変わり電磁力方式の試験力発生機構を採用しました。低試験力の発生と広いダイナミックレンジを実現するために、2つのフォースモータのユニットを装備しています。圧子軸に直接取り付けた小フォースモータは、可動部質量を小さくし、低試験力での振動の影響を小さくし、高分解能を実現しています。大フォースモータは、高い試験力を発生するユニットのコンパクト化のために荷重アームによる拡大機構と組み合わせたものを採用しています。(図.3)
図3 HM-200シリーズ 力発生機構
図3
HM-200シリーズ 力発生機構
 低試験力0.4903mNを実現しているHM-221では、板バネによる支持機構のバネ定数を小さくするために、圧子軸の質量をキャンセルするバランス錘(マスキャンセラ)を装備しています。
 HM-200シリーズの圧子軸保持機構は、圧子軸の上下2箇所に板バネを図のように組み合わせて使用しており、上下のフリー側を連結しています。(図.3) この機構は、ロングストロークで圧子軸を一直線上に移動可能であり、試料セット時のユーザのミスオペレーション、連続多点試験時の試料の傾きによる試験力発生ポイントの誤差に対しても、くぼみ付け位置をより正確に行えます。(図.4,5,6)
図4 多点試験を行う例
図4
多点試験を行う例

図5 連続多点試験のフロー
図5
連続多点試験のフロー

図6 試験機単体運用時のフロー
図6
試験機単体運用時のフロー
 また、試料と圧子が接触した高さが、発生力を校正した高さからずれる場合、保持機構の板バネが発生する力が試験力に影響します。さらに、コイルとマグネットの位置関係により、電流に対するフォースモータの出力が変動します。これらは、リニヤゲージにより圧子軸位置をモニタし、補正を行うことで、常に正しい試験力を試料に与えるよう制御しています。(図.3)

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