JIS改正の要点(旧規格との比較)ロータリテーブル付き評価、スキャンニング検査、シングル及びマルチスタイラス測定

番号 JIS B7440:1987 JIS B 7440-2:1997 JIS B 7440-3 : 2003
PART3
RT付き評価
規定なし 規定なし

本規格は座標測定機にロータリテーブルが付属時の性能評価に適用される規格です。
検査用標準球:直径10~30mmを2個
形状精度が校正されていること。

測定方法:
標準球Aを半径r(下表参照)の位置で、できるだけロータリテーブル表面に近くなるようにロータリテーブル上に設置します。標準球Bをほぼ同じ半径rで標準球Aのほぼ反対の位置に、Aに対してΔhの高さの差をもって設置します(下図参照)。

次の条件に従って、ロータリテーブルに(直交)測定物座標系を定義します。

  1. 1.検査用標準球Bの中心(テーブル表面から最も遠い)を原点とします。
  2. 2.軸方向を定義する第1軸(Z軸)は、ロータリテーブルの回転軸に平行とします。
  3. 3.半径方向を定義する第2軸(X軸)は、第1軸と検査用標準球Aの中心とを含む平面内とします。
  4. 4.第3軸(Y軸)は、接線方向を定義します。

ロータリテーブルを7つの角度位置に回転させ、標準球Aの位置をそれぞれの角度位置で測定します。その後逆方向の7つの角度位置に回転させ、それぞれの位置で標準球Aを測定します。続いて標準球Bでも同様な測定を行います。
測定する角度は任意で良いが、少なくとも一つの角度は始点から720°(2回転)以上が望ましい。

準球のロータリテーブル上の位置:

高さの差(Δh)mm 半径(r)mm
1 200 200
2 400 200
3 400 400
4 800 400
5 800 800

標準球の位置は、製造業者と使用者の合意によって別の値を使用しても良い。

評価方法:
全ての測定結果(標準球A座標値をXA,YA,ZA、標準球B座標値をXB,YB,ZB)を使って、標準球A及びBそれぞれについて、中心座標値の半径方向成分FR(回転軸半径方向誤差)、接線方向成分FT(回転軸接線方向誤差)、軸方向成分FA(回転軸軸方向誤差)を計算します。標準球AについてはFRA,FTA,FAA、標準球BについてはFRB,FTB,FABで表します(下図参照)。

  • 回転軸半径方向誤差(FR)はFRA・FRBの大きな値を採用します。
  • 回転軸接線方向誤差(FT)はFTA・FTBの大きな値を採用します。
  • 回転軸軸方向誤差(FA)はFAA・FABの大きな値を採用します。

合否の判定には不確かさを考慮します。

番号 JIS B7440:1987 JIS B 7440-2:1997 JIS B 7440-4 : 2003
PART4
スキャニング検査
規定なし 規定なし

本規格は座標測定機にスキャニング(倣い)プローブが付属時の性能評価に適用される規格です。

スキャニング方法:
データの取りこみピッチ、スキャニング制御により下表の4つの測定に分類されます。

高密度(サンプルピッチ0.1mm) 低密度(サンプルピッチ1.0mm)
既定経路 HP LP
未定経路 HN LN

*T○○の○○の文字によって、どのスキャニング方法を使用しているかが判別できます。
THPと記載されている場合:既定経路の高密度スキャニング測定を意味します。

検査用標準球:
直径25mm 表面粗さRaで0.05μm以下 硬さHV800以上
形状及び直径は校正されていること。

測定方法:
検査用標準球の4断面(下図参照)をスキャニング測定します。
スタイラスの直径は標準で3mmとし、スタイラスの角度αは45°が望ましい。

  1. 1)測定断面 1  赤道断面
  2. 2)測定断面 2  1)から8mm平行移動した断面
  3. 3)測定断面 3  1)と直交し、極を通る断面
  4. 4)測定断面 4  3)と直交し、かつ極から8mm移動した断面

評価方法:
測定したデータを元に下記の2つの要素を計算します。

・ 4断面全ての測定点を用いて計算した最小二乗球中心に対して、全測定点の存在する範囲(下図A範囲)
・ 4断面全ての測定点を用いて計算した最小二乗球の中心を基準にした時、校正された標準球半径値と最大測定点との距離もしくは最小測定点との距離で大きい方(下図B寸法)

いずれかの値の大きな値をスキャニングプロービング誤差(Tij)とします。

合否の判定には不確かさを考慮します。

スキャニング検査時間(τij):
本規格においては、精度だけではなくスキャニング検査に要する時間の評価も行うように記載されています。

スキャニング検査時間(τij)<最大許容スキャニング検査時間(MPTτij

番号 JIS B7440 : 1987 JIS B 7440-2 : 1997 JIS B 7440-5.6 : 2004 JIS B 7440-5:2013 6 : 2004
PART5
シングル及び
マルチスタイラス測定
規定なし 規定なし

マルチスタイラス誤差測定
プロービングシステムを異なる5つの角度姿勢
(Z軸と平行な姿勢及びその角度と直角を成す面内において隣り合うものと互いに90°離れた4姿勢)において、検査用標準球をそれぞれの姿勢で25点(プロービング誤差の測定点と同一)測定し、検査用標準球の形状、寸法及び位置誤差を測定する。

MF,AF:形状誤差:
全ての姿勢で得られた125点より最小二乗球を算出し、その中心から各点までの距離の幅を検証する。

MS,AS:サイズ誤差:
全ての姿勢で得られた125点より最小二乗球を算出し、その直径と校正値との差の絶対値を検証する。

ML,AL:位置誤差:
各姿勢で得られた25点のグループ(計5グループ)それぞれで最小二乗球を算出し、その中心位置が存在するX,Y及びZ座標の幅の最大値を検証する。

*M:固定マルチスタイラスプロービングシステム
A:回転式プロービングシステム

シングルスタイラス形状誤差 (PFTU
検査用標準球:
直径10~50mm
形状精度が校正されていること。
標準球の形状誤差はPFTU,MPEの20%を超えないことが望ましい。

測定方法:
半球状を均一に25点測定します。
スタイラスの姿勢は、指定がなければラム軸に対して平行にする。

推奨プロービング点

評価方法:
25点すべての測定点を用いて、最小二乗による球の中心座標を求めます。25点それぞれについて半径Rを計算し、25点の半径の範囲を用いて検証します。
シングルスタイラス形状誤差:PFTU=Rmax-Rmin

合否の判定には不確かさを考慮します。

マルチスタイラス誤差測定
プロービングシステムを異なる5つの角度姿勢(Z軸と平行な姿勢及びその角度と直角を成す面内において隣り合うものと互いに90°離れた4姿勢)において、検査用標準球をそれぞれの姿勢で25点(シングルスタイラス形状誤差の測定点と同一)測定し、検査用標準球の形状、寸法及び位置誤差を測定する。

PFTj:マルチスタイラス形状誤差:
全ての姿勢で得られた125点より最小二乗球を算出し、その中心から各点までの距離の幅を検証する。

PSTj:マルチスタイラス寸法誤差:
全ての姿勢で得られた125点より最小二乗球を算出し、その直径と校正値との差の絶対値を検証する。

PLTj:マルチスタイラス位置誤差:
各姿勢で得られた25点のグループ(計5グループ)それぞれで最小二乗球を算出し、その中心位置が存在するX,Y及びZ座標の幅の最大値を検証する。

*j=E:実測によるパラメータ設定を用いた回転式プロービングシステム
j=I:推定によるパラメータ設定を用いた回転式プロービングシステム
j=M:固定マルチスタイラスプロービングシステム
j=N:固定マルチプロービングシステム